UHCとは?

途上国には経済的な理由から医療サービスを受けられず、健康を脅かされ、不安な毎日を送っている人が数多く存在します。このような状況を一刻も早く解決するために、国際社会でユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を推進する動きが高まっています。

ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)とは

全ての人が適切な予防、治療、リハビリ等の保健医療サービスを、支払い可能な費用で受けられる状態のこと*

UHCの主な内容は次の3つです。

つまり、UHCとは、「誰もが、どこでも、お金に困ることなく、必要な質の高いプライマリー・ヘルスケアを受けられる状態」を指します。

2012年12月12日の国連総会においてUHCが国際社会の共通目標として全会一致で議決され、2017年の国連総会で正式に12月12日が「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ国際デー」となりました。そして2019年9月の国連総会で、歴史的な「UHC政治宣言」が採択されました。グテーレス国連事務総長は本政治宣言を「グローバル・ヘルスに関して成立したこれまでで最も包括的な合意」であるとしています。

UHCをめぐる国連と日本の動き

国連の動き 日本の動き
2012年12月12日
国連総会でUHCを国際社会の共通目標として推進することが議決される
2013年5月
国際保健外交戦略でUHC主流化を柱に据える
2014年
外務省NGO研究会『NGOのためのUHCハンドブック』発行
2015年9月
「持続可能な開発目標(SDGs)」のターゲットのひとつとしてUHCの達成が位置づけられる(ターゲット3.8)
2015年9月
開発協力大綱の保健分野の課題別政策として策定された「平和と健康のための基本方針」においても、政策目標としてUHCが柱のひとつに据えられる
2016年
UHC2030のための国際保健パートナーシップ(International Health Partnership for UHC2030,略称:UHC2030)が発足**(国際保健パートナーシップ(IHP+)が拡大・強化する形でUHC2030が発足)
2016年5月
G7伊勢志摩サミットで初めてG7としてUHCに触れる
2017年12月12日
国連で正式に毎年12月12日を世界ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)デーと定める
2017年12月
世界銀行、WHOと市民社会との共催でUHCフォーラムを東京で開催
外務省NGO研究会『ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)と市民社会の取り組み』~誰一人取り残さないUHCを目指して~発行(編集:ジョイセフ)
2019年9月24日
国連「UHCに関するハイレベル会合」が開催され、初の「UHC政治宣言」が採択される
2019年
G20初の財務・保健大臣会合を行い、UHC財政強化を打ち出す
G20 岡山保健大臣宣言
12月12日外務省とNGOが協働、また国連機関(東京)がUHCデーWebキャンペーン2019を推進
2020年
ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの実現にむけて(国連機関と日本政府の協働広報紙)
2020年
 4月19日加藤勝信厚生労働大臣が出席しG20保健大臣会合(ビデオ会議)開催
10月8日茂木外務大臣によるUHCフレンズ閣僚級会合の主催
12月12日外務省とNGOが協働でUHCデーWebキャンペーン2020を推進
公益財団法人ジョイセフ作成

 


 

UHC図解

ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)

-地球上の全ての人が負担可能な費用で基礎的保健医療サービスを受けられるように-

定義
  1. 質の高い基礎的な保健サービス(安価な必須医薬品とワクチン等)へのアクセス
  2. すべての人々に対する経済的リスクからの保護

(参考)
*世界保健機関(WHO)https://www.who.int/health-topics/universal-health-coverage#tab=tab_1)
*厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000158223_00001.html

UHCデーとは

あなたは、お金のことを心配して、病院に行けないことがありますか?
一番近い診療所まで半日以上かけて徒歩で通ったことがありますか?
病院や診療所に行っても、お医者さんがいない、薬がない状況に遭遇したことがありますか?
診察を受けることで、身の危険を感じたことがありますか?

日本に生きる私たちにとっても無縁ではない、『病気とお金』にまつわる悩みや苦しみ。
世界に目を転じれば、ますます多くの人々が、共通する苦しみ、悲しみ、辛さを抱えています。

10億人が基礎的な保健医療サービスを受けられていません。
1億人が、そうしたサービスにアクセスしようとすると、
生活が困窮しかねない状態にあります。

12月12日は、「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)・デー」
― 誰もが、どこでも、お金に困ることなく、
自分の必要な質の良い保健・医療サービスを受けられる状態 ―
を実現するよう世界に呼びかける日です。

2012年12月12日、国連総会でユニバーサル・ヘルス・カバレッジを国際社会共通の目標とする決議が全会一致で採択されました。
これを記念して、市民社会が中心となって2014年から12月12日を「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ・デー」とすることになりました。

そして国連でも2017年、12月12日を「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ国際デー」とことが採択されました。

2017年「UHCフォーラム」が開催されました

ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)が、2016年5月27日に発表された「G7伊勢志摩首脳宣言(コミュニケ)」に安倍首相のリーダーシップの下、保健の中心的な課題として言及されました。UHCがG7の首脳宣言に記載されたのは初めてで、画期的なことでした。

この首脳宣言では「UHCを達成するため、保健システムは強固で、強じんで、持続可能であり、かつ、その対象となる人々の現在及び将来のニーズに応えるものであることが必要である」と述べられています。さらに「我々は、誰一人取り残さないという原則に基づき、UHCの達成を加速化することの重要性を認識し、特に途上国において、保健システムを強化し、より強じん、包摂的、費用負担可能、持続可能、かつ、公平なものとするため、我々の支援及び協調を強化することに対するコミットメントを改めて表明する」と言及されています。「誰一人取り残さない」というのは、2030年までの目標を定めた持続可能な開発目標(SDGs)で、特に重視されている考え方です。

そして2017年12月には外務省、財務省、厚生労働省、世界銀行、世界保健機関(WHO)、国連児童基金(UNICEF)、UHC2030、国際協力機構(JICA)が「UHCフォーラム2017」を東京で共催し、各国のUHC推進を確認しました。

今後はUHC達成に向けて、あらゆるアクターが、具体的な対策を講じる必要があります。たとえば、日本政府は各国のUHC促進のための保健計画の支援、市民社会はUHCを進めるための国際的なガバナンスと活動への参画などが考えられます。この力強い首脳宣言が、言葉だけで終わらないようにしなければなりません。